脳卒中センター
ご挨拶
脳卒中は単一疾患としては最も患者数の多い疾患であり、日本人の死因第3位、寝たきり原因の第1位を占める国民的な病です。その原因は生活習慣に起因することが多く、予防を含めた総合的な治療と管理が必要となります。また、高齢化社会とも深く関係するため、介護などの社会的な対応とは切り離せません。一方、脳神経分野の検査技術や治療手段の進歩は目覚ましく、より高度な専門医療が求められるようになってきました。 これらの状況に応えるためには、これまでのような単科診療では限界があります。複数の関係科、コメディカルを含めた専門的な合同医療体制を作ることが必要となってきました。さらに単一病院ではなく、シームレスな地域医療体制を構築することが求められています。京都市立病院はこれらの状況に対応し、脳卒中患者に対する総合的な治療を充実させるために「脳卒中センター」を開設しました。
診療体制
脳神経外科と神経内科が合同で診療にあたります。科の枠を越えた情報共有、治療方針の決定を行い、外科と内科の長所を補い合った診療を目指しています。京都市立病院には脳神経外科医2名、神経内科医8名が在籍しています。
脳卒中センター部長 (神経内科部長) |
中谷 嘉文 なかや よしふみ |
臨床神経学一般 |
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日本神経学会専門医(指導医) 日本内科学会認定医 | ||
脳卒中センター副部長 (脳神経外科部長) |
地藤 純哉 じとう じゅんや |
脳神経外科一般 脳腫瘍 |
日本脳神経外科学会専門医・指導医 日本脳卒中学会専門医・指導医 日本神経内視鏡学会神経内視鏡技術認定医 |
診療の中核となるのはStroke Unit(SU)です。神経専門病棟に医師のほか、多職種の脳卒中専門家(看護師、リハビリテーション技師、薬剤師、MSW)が集い、チームで集中的な治療を行うというコンセプトです。3D病棟が専門病棟となります。
脳卒中治療は内科的治療のみならず、外科手術、血管内治療を組み合わせたmultimodality treatmentと発展してきました。常時、脳の画像検査(CT、MRI)、カテーテル検査が可能であり、緊急で脳手術と血管内治療の両方を行うことができます。
今後、さらに集中的な治療を行えるようSCU(Stroke Care Unit)の設置を予定しています。
脳卒中センターの役割
1) 急性期治療
tPA静注療法を初めとした内科的治療、緊急外科手術(血腫除去術、クリッピング術)や血管内治療(血栓回収術、コイル塞栓術)を行います。また、積極的な急性期リハビリテーションを重視しています。
2) 慢性期予防的治療と検査
血管危険因子のチェック、画像による脳血管・機能評価を行い、脳卒中の予防対策を行います。必要に応じて関係科(循環器内科、糖尿病内科、腎臓内科など)への紹介を行います。厳密な適応のもとに、予防的な外科治療を行っています(未破裂脳動脈瘤、頚動脈狭窄症など)。 当院では脳ドックを行っており、異常を指摘された場合には責任をもって対応しています。
3) 地域医療連携
脳卒中パスを活用したシームレスな医療連携を推進しています。脳卒中の予防、脳卒中後遺症のケアには、全身的な内科管理が重要となります。状態が落ち着けば、積極的にかかりつけ医へ紹介し、いつでもバックアップできる体制をとっています。
対象疾患と診療内容
1)脳梗塞
発症4.5時間以内の超急性期脳梗塞は、tPA静注による血栓溶解療法で神経症状が著明に改善する場合があります。また、tPA静注が無効であったり適応にならない症例に対しては、血管内治療(血栓回収術など)を行うことがあります。当院では、患者さんの背景、頭部画像(CT/MRI)などから、こういった閉塞動脈の再開通治療の適応を適切に判断し、実施しています。これらの治療のほかにも、抗血栓療法、脳保護療法などの内科的治療を安全かつ効果的に行うことで、患者さんができるだけ早期に社会復帰できるように尽力しています。
2)脳出血
ほとんどの脳出血は内科的に治療が行われています。 救命のための緊急手術(開頭血腫除去術)を常時行うことができる体制をとっています。一方、より速やかに回復を促すために、侵襲の少ない内視鏡手術や定位脳手術を行うことがあります。
3)クモ膜下出血
クモ膜下出血の原因のほとんどは脳動脈瘤の破裂です。これに対する治療方法には外科手術(開頭クリッピング術)と血管内治療(コイル塞栓術)があり、どちらの治療も当院では可能です。どちらが優れているというよりも、年齢や体調、動脈瘤の部位や形によって、どちらの方が治療しやすいか、安全かという観点から総合的に判断し、最も良い結果が得られるように治療方針を決めています。
近年、偶然に画像検査で脳動脈瘤を発見されることが増えてきました。この未破裂脳動脈瘤に対する治療方針は専門医によって判断されます。適応があれば、上述の如く、より良いと思われる治療方法をお勧めします。
当院における脳卒中診療実績
2011年の京都市立病院の独立行政法人化後、脳神経外科・神経内科のスタッフが増員され、救急医療に力を入れてきました。特に超急性期から急性期患者の治療において、成果が出てきております。急性期症例だけでなく、未破裂脳動脈瘤や頚動脈狭窄症などに対する検査や予防的な治療も増加しています。
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
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くも膜下出血 | 33 | 23 | 16 | 17 | 11 | 11 |
脳出血 | 92 | 90 | 65 | 59 | 61 | 59 |
脳梗塞 | 193 | 231 | 189 | 190 | 240 | 195 |
その他 | 86 | 56 | 34 | 48 | 65 | 71 |
全体 | 404 | 400 | 304 | 314 | 377 | 336 |
多職種でのバックアップ体制
リハビリテーション科には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士計20名が在籍し、脳卒中センターに入院されている患者さんに対してリハビリテーションを提供しています。
脳卒中センターでのリハビリテーションは、急性期に特化しています。そのため、Stroke Unitとして、他職種と連携を取りながら発症後できるだけ早くリハビリテーションを開始します。安全性を考慮した上で早期から座位・歩行練習、日常生活動作練習、言語練習、摂食嚥下練習を行い、障害された機能の早期回復を目指します。リハビリテーション開始後は、看護師の協力を得ながら、リハビリテーションで行った内容を病棟での生活場面の中に取り入れています。また、回復期リハビリテーション病棟への転院をスムーズに行うために、地域連携室や他の医療機関との連携・情報共有を行っています。