ロボット支援手術について

 

令和6年2月から泌尿器科・消化器外科でダヴィンチSPによる手術を実施~関西初(国内6台目)導入のSPと従来機種Xiの2台体制へ~

当院は、地域がん診療連携拠点病院としての責務を果たすため、安全で質の高いがん医療の提供を目指し、がん診療の充実、最新医療機器の導入など、先進的かつ高度な医療に取り組んでいます。

手術治療においては、低侵襲性、機能性及び確実性(根治性)を図るため、平成25年にダヴィンチSiを導入し、手術症例を重ね、更なる高度な術式に対応していくために、令和2年にダヴィンチXiに機種を更新しました。

以降、泌尿器科、呼吸器外科、消化器外科においてダヴィンチ手術を行ってきましたが、手術件数の増加及び今後を考慮し、日本初のシングルポートで、より低侵襲(身体への負担や痛みの軽減)かつ整容性(傷跡などの美容面)に優れた手術を実現できることや婦人科症例との親和性が高い「ダヴィンチSP (Single-Port)」を令和5年12月に関西で初めて(国内6台目)導入しました。

令和6年2月からは泌尿器科、消化器外科において、ダヴィンチSPによる手術を開始しており、現在は従来機種ダヴィンチXiとの2台体制による手術を実施しております。

今後、泌尿器科、消化器外科、呼吸器外科に加え将来的に婦人科等への適応など、幅広い症例にしっかりと対応してまいります。

  ダヴィンチXi  ダヴィンチSP
当院の機器設置年 令和2年  令和5年
日本国内の納入台数
令和5年12月末時点)
600台以上  6台
アーム数   4本 1本
切開創の数 最少4箇所(カメラ1箇所、鉗子3箇所の場合) 最少1箇所(最小切開創は2.7cm)
 

 泌尿器科部長、総合外科部長からのメッセージ

平成25年の前立腺がん手術以来、10年以上にわたりダヴィンチ手術支援システムは我々泌尿器科のがん診療を支えてくれました。今まで、泌尿器科だけで1,100名以上※の方がダヴィンチを使用したロボット支援手術を受けられています。今回、従来のダヴィンチXiに加えて、ダヴィンチSPという頼もしい「相棒」が当院の仲間に加わりました。当院のロボット支援手術は新たなステージに進みます。この「相棒」たちの特長を最大限に活かし、今まで以上に、より満足いただける医療を提供してまいります。
※ 平成25年9月~令和5年12月



がん手術において大切なのは「安全性」と「根治性」であり、その両者が担保されて初めて「低侵襲性」に価値が生まれます。ダヴィンチSPは、消化器がんの切除術を受けられる患者さんにとって更なる低侵襲性をもたらすことと考えております。当科での食道がん、胃がん、大腸がん、直腸がん、肝がん、胆道がん、膵がんに対する外科治療においては、安全性・根治性・低侵襲性のバランスが取れた適切な手術を提供してまいります。

 

ダヴィンチ手術のメリット

患者さんの身体への負担軽減
ダヴィンチ等のロボット支援手術は、患者さんの体に小さな穴を開けて行う傷口が小さい低侵襲の手術です。そのため、開腹(開胸)手術と比べて「傷口が小さい」「出血量が少ない」「手術後の痛みを軽減」「回復が早く入院期間が短い」といったメリットがあります。
精度の高い手術
ダヴィンチでは、術者が拡大された立体画像を見ながら、手ぶれを自動補正された大きな動きで、細かな手術操作を繰り返していきます。高精度の映像でより細部まで確認でき、従来の手術では届きにくかったところまでロボットのアームが届き、実際の手では困難な動きも可能とします。これまで取りにくかったがん病変まできれいに取り除くことができるため「再発を減らす」「合併症を減らす」可能性も高まります。
ダヴィンチの構成等についてはこちら

当院で行っているロボット支援手術

診療科 疾患 手術の種類(保険適用・内視鏡手術支援機器を用いるもの)
泌尿器科 前立腺がん
腎がん
腎盂尿管がん
膀胱がん
骨盤内臓器脱
腎盂尿管移行部狭窄症 など
腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術
腹腔鏡下尿管悪性腫瘍手術
腹腔鏡下腎盂形成手術
腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術
腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術
腹腔鏡下仙骨膣固定術
消化器外科 食道がん
胃がん
結腸がん
直腸がん
肝がん
胆道がん
膵がん   など
胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術
腹腔鏡下胃切除術
腹腔鏡下噴門側胃切除術
腹腔鏡下胃全摘術
腹腔鏡下肝切除術
腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術
腹腔鏡下直腸切除・切断術

呼吸器外科

肺がん
縦隔腫瘍
重症筋無力症 など
胸腔鏡下拡大胸腺摘出術
胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術
胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術
胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(区域切除)
胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの)

※上記については、医療保険でのお支払いとなります。詳しくは病院スタッフへお尋ねください。

当院の実績

ダヴィンチ手術の診療科別件数推移(4月~3月実績)
  平成25年 平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
泌尿器科 45 76 70 72 115 105 123 123 118 138 165
消化器外科   15 12 2 6 7 13 33 40 51 105
呼吸器外科           26 24 38 52 50 48
合計 45 91 82 74 121 138 160 194 210 239 318

泌尿器科

ロボット支援手術に保険が適用になった最初の疾患が、泌尿器科の担当する前立腺がんです。2012年のことでした。その後、2016年に腎がんに、少し遅れて、2018年に膀胱がんをはじめとした多くのがんの手術に保険が適用になりました。2022年には腎盂がん、 尿管がんにも保険の適用は広がりました。また、手術支援ロボットは、がんの手術のみならず、腎盂尿管狭窄症や骨盤内臓器脱などの良性疾患にも利用されています。
当院泌尿器科では、保険診療としての前立腺がんロボット支援手術で実績を挙げ、その経験の裏付けの下、腎がん、膀胱がんに対しては、保険が適用になる以前から、積極的に取り組んでいます。その甲斐があり、ロボット支援手術に関する国の厳しい施設基準も当初から満たすことができています。また、ダヴィンチ手術支援ロボット専用の手術室の効率的な運用で、手術まで長期間お待ちいただくことなく治療が可能です。
前立腺がん、腎がん、膀胱がん、 腎盂がん、 尿管がんと診断され、手術療法を勧められている方は、ロボット支援手術が可能かどうか、地域の医療機関を通じ、一度当院までご相談ください。腎盂尿管移行部狭窄症、骨盤内蔵臓器脱と診断された方も同様です。

消化器外科

平成25年にダヴィンチSiが配備されたことを受けて、ライセンスを持つ医師2名を中心にロボット支援胃がん手術の準備を進めました。その後、倫理委員会の承認を経て、患者さんへの充分なインフォームドコンセントの下に開始し、これまで多数の実績を積み重ねてきました。
現在、胃がん・直腸がんの手術においてロボット特有の機能を用いて、従来の腹腔鏡下手術よりも高精度・低侵襲な手術を提供しています。特に、ダヴィンチXiによる直腸超低位前方切除で、腫瘍が肛門に近い患者さんにも肛門温存が可能となっています。令和4年度からは、結腸がん、肝がん、胆道がん、膵がんの患者さんにもダヴィンチ手術を実施しています。麻酔科による腹直筋神経ブロック、NSAIDSの術後定期投与を低侵襲手術と組み合わせ、「痛くないがん根治手術」を実践しています。

呼吸器外科

呼吸器外科では、平成26年4月に肺がんに対する肺葉切除術、縦隔腫瘍切除術が保険適用となり、当院でも平成26年9月から保険診療によるロボット支援手術を開始しています。特に縦隔疾患では胸腔内が広く使えるため有用性が高く、当科でも縦隔腫瘍・重症筋無力症の患者さんへのダヴィンチ手術を実施しています。胸郭上部の狭い空間で行う手術手技は、ロボット支援手術のメリットが発揮される場面であると考えています。

ダヴィンチの構成等について

内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、低侵襲技術を用いて複雑な手術を可能とするために開発された手術支援ロボットです。ダヴィンチは、ロボット部、操作部、助手用の映像カートの3つで構成されており、高画質で立体的な手術画像の下、人間の手の動きを正確に再現する装置です。
ロボット部には先端に鉗子やメス、内視鏡などを取り付けるロボットアーム(Xiは4本、SPは1本)が装着され、術者は箱型の操作部に映し出される鮮明な内視鏡画像を見ながら人の手首よりはるかに大きく曲がって回転する手首を備えた器具を使用し、精緻な手術を行います。
ロボット支援手術は、認定資格を取得し十分なトレーニングを積んだ医師によって行われます。ロボットの役割は医師のサポートで、ダヴィンチが勝手に動作することはありません。医師がロボットを活用することで、より精度の高い手術を行うことができるのです。

 

術者の見る映像

ロボット部の内視鏡によって、操作部に3D(3次元)の高精細拡大映像が送られてきます。術者は、手元で組織や鉗子を細部まで確認することができます。

術者の見る映像

術操作の伝達

緻蜜な動作が必要とされる手術操作の際、術者の手の動きは実際よりも小さな動作に変換され、手ぶれも取り除かれてロボットアームに伝わります。

術操作の伝達

ロボットアームの関節

鋏や鉗子などを取りつけるアームは関節を備えています。人で言えば手首にあたりますが、人の手以上に自由に動かすことができます。

ロボットアームの関節

ダヴィンチの特徴

鉗子の多関節機能

鉗子などを取り付けるアームの関節の可動域は大きく、人の手よりも自由で詳細な動きが可能です。その再現精度は極めて高く、スムーズであり、患部に直接触れているような感覚で手術することができます。

手ぶれ防止機能

術者の手先の震えが鉗子に伝わらないよう、手ぶれを制御する機能が搭載されています。細い血管の縫合や神経の剥離など、高い集中力を必要とする精緻な作業でも、正確に操作をすることができます。

3D画像

術者は3次元カメラによる鮮明で奥行きのある画像を見ることができ、3Dの高精度拡大画像で組織や鉗子を細部まで確認しながら手術を進めることができます。

よくあるご質問

Q:ロボット支援手術とはなんですか?
A:ロボット支援手術は、医師が3D映像を見ながら遠隔操作し、人よりも精密な動きができるロボットを操って手術を行うものです。

Q:ロボット支援手術の良いところはなんですか?
A:メスやカメラの小さな侵入口だけあれば手術できるので、患者さんの負担が少なくて済むのはもちろん、このロボットには人の手よりも多くの関節を持ったアームがあります。スムーズに動くだけでなく、手ぶれを補正し、より精密な手術が可能となります。

Q:どんな病気でもダヴィンチで手術することができますか?
A:手術が必要となるすべての疾患で、ダヴィンチによる手術が行えるわけではなく、当院では現在3科(泌尿器科、消化器外科、呼吸器外科)で実施しております。また、患者さんごとの病状や既往歴などでダヴィンチによる手術を行えない場合もあります。当院では主治医が患者さんに十分な説明を行い話し合うことで、患者さんに合った術式を選択できるよう努めております。

Q:費用はどのくらいかかりますか?
A:当院では、上記の「当院で行っているロボット支援手術」については、保険診療として実施しております。そのため、先進的な医療であるにも関わらず、医療費の負担は従来の手術とあまり変わりません。例えば、前立腺がんの手術費用は、1割負担で約110,000~120,000円、3割負担で330,000~350,000円程度となります。入院・手術にかかわる自己負担額は年齢・収入および健康保険制度、高額療養費制度によって異なりますので、お問い合わせください。その他の手術については、保険適用ではないため自由診療となり、全額自己負担となります。

お問い合わせ

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医療機関の方

地域連携室 電話番号 075-311-6348

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