子宮・卵巣

患者さんへのメッセージ

「がん」と告知され、その事実に戸惑い、落ち込み、不安に感じられている方も多いかもしれません。日本人の2人に1人が、その生涯でがんにかかる時代になったとはいえ、「なぜ、自分ががんになったのだろう」と悩み、将来に不安を感じながら、毎日を送られている方も多くいらっしゃると思います。
そのような日々のなかで、ご自身で本を読んだり、ネットで検索したりして、「この治療法はどうなっているだろう」「こんな薬を服用したらどうだろう」などいろいろな思いを抱かれても、主治医や看護師に「こんなことを言ったら、いやがられてしまうんではないか」などの気持ちから、言いだしかねている方へ、お願いがあります。どうか、そのお気持ちを躊躇せずお話ください。その思いにお応えする十分な気持ちや説明を、我々は用意しています。たとえその場で十分に説明ができなくても、時間をいただき医学的にも調べた上で、必ずご返事申し上げます。
これからあなたががんと戦っていく、あるいはがんと付き合っていく、何らかの術(すべ)を、我々は提示することができると考えています。

産婦人科部長 小芝 明美
産婦人科部長
小芝 明美

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子宮頸がん

子宮の出入り口である子宮頸部に生じるがんで、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)の感染が原因とされています。
HPVとは「いぼ」を発生させるウイルスで、150以上の種類があり、初回性交後4~5年で約半数の女性が感染します。しかしそのほとんどが体から自然に排泄されますが、およそ15種類ほどのハイリスクウイルスは感染が持続し、数年かけてがんになっていきます。最近は、初交年齢が若年化している傾向から、20歳代で発症する方も多くなりましたが、現在のところ40歳代が発症のピークとなっています。

初期の症状は全くなく、たとえHPV予防ワクチン(サーバリックス、ガーダシル、シルガード9)を接種されている方でも油断は禁物で、定期的ながん検診による早期発見がとても重要です。

当院では、HPV予防ワクチンを積極的に接種すると同時に、がん検診、HPV検査、組織検査を実施し、毎年80名前後の方の「子宮頸がん」(上皮内がんを含む)治療を行っています。具体的には、進行度にもよりますが、手術による子宮(もしくは子宮の一部)の摘出、抗がん剤の点滴、放射線の照射であり、その効果を最大限に生かすためにこれらをあわせて行う場合もあります。

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子宮体がん

子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる部位に生じるがんで、Ⅰ型とⅡ型の2種類があります(以下)。

Ⅰ型 女性ホルモンである「エストロゲン」が多い状態が続くことにより発症すると考えられています。
Ⅱ型 女性ホルモンである「エストロゲン」とは関係なく、糖尿病や遺伝が原因と考えられています。

Ⅰ型では、がんの進行がそれほど速くはありませんが、全体の約10%を占めるⅡ型では進行が速いとされており、早期発見・早期治療が大切です。  主な症状は不正性器出血です。生理中ではないにもかかわらず性器から出血したり、閉経後に性器からの出血があったりすることが、全体の約95%に認められます。発症する年齢をみると、閉経前後の50~60歳代がピークとなっています。

一般的に「子宮がん検診」と呼ばれているのは子宮頸がんの検診であり、「子宮体がん」を調べるものではありません。そのため定期的に「子宮がん検診」を受けている方も、不正性器出血がある場合には、「子宮体がん」の検査を受ける必要があります。この検査では、子宮の中に細いクダのようなものを挿入し、中の細胞や組織を採取します。

当院では、「子宮がん検診」の際にも、不正性器出血がないかをしっかり聞き取り、超音波検査で子宮内膜の異常な厚みがないかを検査して、積極的に子宮体がん検査を行い、毎年20名前後の方の「子宮体がん」を治療しています。治療法は、手術による子宮の摘出、抗がん剤の点滴、放射線の照射がありますが、早期であり、がんの種類によってはホルモン剤を投与して子宮を温存できる場合があります

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卵巣がん

女性ホルモンを作り出したり、卵子を成長させて排卵をおこしたりする卵巣に生じるがんです。排卵の回数が多い人(初潮が早かったり、閉経が遅かったり、妊娠経験の少ない場合)や、特定の遺伝子に変異(変化)がある人に発生しやすいと考えられています。

卵巣はさまざまな種類の細胞の集まりであり、それだけがんの種類も多彩です。発症しても自覚症状がほとんどなく、気づいた時にはかなり進行していることが多いため「サイレントキラー(無言の殺人者)」と呼ばれています
それほど多いがんではなく、年間約1万3千人の方が発症しますが、死亡率が高く、5千人近い方が亡くなっています。50~60歳代に発症のピークが見られます。
お腹の中に生じるがんであるため、子宮のように診察で外から細胞などを採取することが難しく、手術をして初めてその種類を確認することができ、その種類によって治療方法が変わってきます。治療法は、主に手術による摘出、あるいは抗がん剤の点滴、服用です

がん自身の遺伝子の変化が治療法に影響することが多く、当院では、積極的に遺伝診療部と協力して、遺伝子検査を行っています。さらに全体の約20%を占める遺伝性の卵巣がんについては、遺伝子検査によって、家族で遺伝することが判明し、“まだ発症していない家族の方が将来的に高い確率で同じがんになる”のを見つけることが可能になりました。当院では、そのような方には、十分なカウンセリングを行って、卵巣がんを予防するために、あらかじめ卵巣を摘出する手術も実施しています。

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子宮肉腫

「子宮体がん」が、子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる部位に生じるがんであるのに対して、子宮肉腫」は、子宮の筋肉の壁やそのすきまに生じる悪性腫瘍です(がんとは少し異なります)。
特徴的な症状はほとんどありませんが、閉経前後(50歳代)の不正性器出血や、短期間に急激に大きくなることによるお腹の違和感などがあります。かなりまれな病気で、年間約800人の方が発症します。

がんが疑われる部分や、そのおおもととなる細胞を採取して調べ、診断を行います。MRIやCTを撮って診断することもあります。その際、子宮筋腫とよく似ていることから見間違えないよう注意が必要です。
治療法は、手術による摘出、あるいは抗がん剤の点滴ですが、肉腫に効果のある抗がん剤の種類が少なく、効果も限定的で、進行度にもよりますが、5年生存率は30~40%とされています。
肉腫の組織は、がんの組織と比較したとき、特徴的な遺伝子の変化をもっていることが多い傾向があり、当院では、その特徴を調べて、一番適した治療薬を見つける「遺伝子パネル検査」を遺伝診療部と協力して積極的に行っています。

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絨毛がん

絨毛(じゅうもう)とは、妊娠女性の子宮と胎盤との間にできる組織のことであり、絨毛がん」は妊娠を経験した女性の子宮(まれに卵巣にも)に生じるがんです。流産や死産、胞状奇胎(ほうじょうきたい:以前は「ぶどうご」と呼ばれていた。妊娠した子宮の中にぶどうの房のようなつぶつぶが多数できる病気)の後に発症することが多いとされていますが、正常分娩の後に生じることもあります。

症状として最も多いのは、子宮からの不正出血です。流産、死産、胞状奇胎、正常分娩などの妊娠が終わった後に、長引く出血や、月経以外の出血が起こることが、診断するのに非常に大切なポイントになります。
また進行が速く、他の臓器(特に肺、脳、腎臓)に転移しやすい特徴があり、転移先でそれぞれの症状が現れて初めて「絨毛がん」と診断されることもあります(以下、転移した場所とその症状)。

転移した場所 症状
咳や胸の痛み、喀血(かっけつ:血を吐くこと)など
頑固な頭痛、まひ、けいれんなど
腎臓 血尿など

以前は、日本人に多いがんの一つとされていましたが、最近では非常にまれな病気となり、年間40~50人が発症します。
治療法には、手術による摘出(子宮、転移した部位の臓器)、抗がん剤の点滴があります。最近の抗がん剤の進歩によって、絨毛がんによる死亡率は減少し、進行度や転移の有り・無しにもよりますが、完治する確率は80~90%になりました。ただし、早期の診断と治療開始が必要なことは言うまでもありません

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京都市立病院

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