血液浄化センター
基本診療方針
- ガイドラインに則した診療・治療
- 透析導入、維持血液透析および維持腹膜透析の管理、透析中の合併症対応、血漿交換療法・血液吸着療法まで全ての血液浄化療法に対応
- 腎代替療法選択への積極的なかかわり
- 地域透析施設との密接な連携(地域からの透析患者さんの相談・治療は断らない)
診療スタッフ
医師11名はすべて腎臓内科と兼任。臨床工学技士は兼任で13名。専任看護スタッフ6名。看護補助者1名。
診療疾患
- 急性腎不全
- 慢性腎不全(透析導入)
- ネフローゼ症候群(巣状糸球体硬化症)
- 急速進行性腎炎(RPGN)
- 膠原病や神経疾患など自己抗体が病因となる疾患群
- 高コレステロール血症
- リウマチや炎症性腸疾患など活性化した白血球が病態にかかわる疾患
- 電解質異常
- 維持透析患者の種々の合併症
業務内容の特徴と実績
1)多様性に対応する
最近は腎疾患の種類・原因も多様化し、治療法においても、腎代替療法において患者さんのニーズに応じつつ、エビデンスを参照しながら多様な対応が迫られるようになってきた。これまで行ってきたブラッドアクセスの作成・再建、末期腎不全患者の血液(濾過)透析以外にも、肝不全や自己免疫疾患などに対する血漿交換療法、急性中毒や高脂血症・神経疾患などに対する血液吸着療法、炎症性腸疾患などに対する白血球除去療法など幅広い分野にわたる血液浄化療法を実施している。腎代替療法でも在宅医療の促進という観点から腹膜透析や腎移植を積極的に提示している。当院では腎移植術はまだ準備段階だが、市内の両大学と連携した移植症例が増えてきている。
2)超音波ガイド下血管穿刺法
超音波を活用し安全な血管穿刺を実践している。当初の中心静脈から、血液透析内シャント、また表面からは触知困難な末梢静脈までその範囲を広げている。本法によりダブルルーメンカテーテルを使わずに血液浄化法が可能となり、自己免疫疾患に対する特殊治療等にも有用である。また超音波ガイド下の内シャント拡張術の症例も増えてきている。
超音波でとらえた血管内の針先(矢印)
3)透析患者さんの体液管理
超音波検査やon lineの循環血液量モニタリング(BV計)、バイオインピーダンス法などを利用して透析患者さんの体液量を適正に管理している。
4)透析患者さんの自己管理支援
透析間の体重管理や、カリウム・リン・塩分制限などの栄養管理、下肢末梢動脈疾患予防や、悪化予防に向けたフットチェックやフットケア及び自己での管理指導を行っている。糖尿病・代謝内科、循環器内科、皮膚科、糖尿病認定看護師等とともにフットケアチームに参画している。
5)患者さんへの情報提供
腎臓病教室を開催し、腎臓病とその治療について、情報を提供し、患者さんが自分の病気を知り、自ら病気に向き合えるようにしている。教室は薬剤師・栄養士・リハビリテーション部・地域連携室(MSWも含めて)と協力して行い、患者さん一人一人とコミュニケーションをとりながら、DVDや実物を積極的に利用して具体的に説明している。教室を通して、栄養管理や運動、薬物療法という治療に患者さんが主体的に関わり、腎機能の低下を少しでも遅らせることを目標としている。この教室は無料で、地域の医師にかかりつけの患者さんも参加可能である。また腎機能低下のある患者さんに、個別に腎代替療法(腹膜透析や腎移植・血液透析)について利点や欠点を説明し、患者さんの生活習慣や大切にしたいことに寄り添った意思決定ができるように支援している。
腎臓病教室は奇数月の第2木曜、第3木曜、第4木曜の13:30~15:30に開催
第2木曜日 |
医師 |
腎不全初期の患者に腎臓の働きや、症状について説明 |
薬剤師 |
薬物療法について |
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第3木曜日 |
栄養士 |
食事療法について |
理学療法士 |
運動療法について |
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第4木曜日 |
医師 |
腎不全末期の患者対象に腎代替療法について説明 |
看護師 |
腎代替療法について具体的イメージが持てるように説明 |
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MSW |
社会的資源の活用について |
* 木曜日が祝日の場合、1週ずつずれます。
年度診療実績
2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | |
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透析回数 | 6,739 | 7,102 | 7,486 | 7,876 | 7,957 |
透析導入数 | 55 | 30 | 51 | 55 | 54 |
特殊血液浄化 | 30 | 65 | 73 | 86 | 82 |
種々の治療にも関わらず、残念ながら末期腎不全が進行した場合は、腎代替療法の選択と導入が必要となる。当院では腎臓内科が血液浄化療法を管理しており、保存期腎不全から透析療法への移行がスムーズに行える。特に、腎代替療法の選択では上記のとおり具体的な説明を心がけている。
地域医療への貢献
当院では年間に約50名の新規透析導入を行っている。透析導入後、安定した患者さんはその希望に沿って病診連携を通じて地域の維持透析施設に紹介している。一方で地域からの透析患者さんの相談・治療は断らない方針で臨んでいる。当科は地域の基幹血液浄化施設として、近隣の透析施設や他大学を含む医療施設との連携を重視している。単に導入患者を送り出すだけでなく、透析患者の合併疾患(心血管疾患、悪性腫瘍など)に対する専門各科の治療に伴う透析療法や長期維持透析合併症(糖尿病合併症、二次性副甲状腺機能亢進症、透析アミロイド関連合併症、シャントトラブルなど)の患者さんを積極的に受け入れ、関連各科との連携の上で治療を行っている。その際には合併症予防のための至適透析の実施を心がけている。
腎臓病教室を地域の先生にかかりつけの保存期腎不全患者さんにも解放して、情報提供に努めるようにしている。