食道がん
はじめに
当院の食道がんについて解説を行います。当院の特徴としては、からだへの負担が少なく、精密な操作が可能な⼿術⽀援ロボットを⽤いた⼿術を⾏っています。また、看護師、管理栄養士、理学療法士、言語聴覚士、心理士といった多職種が連携して、手術前の説明、入院中や術後の生活をサポートしています。
当院は京都府内でロボット⽀援での食道がん⼿術を実施している医療機関の⼀つです。さらに、1か所の⼩さな切開からカメラと器具を挿⼊する「ダヴィンチSP」を導⼊しているのは、京都府内で当院のみです。(2025年12⽉時点)
当院は2026年1月から日本食道学会の食道外科専門医認定施設の認定を受けております。食道外科専門医施設は、手術後の合併症が少なく、生存率が高いことが報告されています。(https://www.esophagus.jp/public/list/superiority.html)

食道がんの診断から治療開始までの流れを教えて下さい

食道がんの診断は内視鏡検査(胃カメラ)で行われます。また他の臓器(リンパ節や肝臓など)への転移の有無をCT検査などで確認します。こうした検査を他の病院・クリニックか当院の消化器内科で行った後に、外科の外来を受診されます。もし追加の検査があれば、外科外来で受けていただけるよう手配を行います。
外来では、検査結果からがんの進行度を決定し、適切な治療方針を決定します。当院では、消化器内科・腫瘍内科・放射線科・外科が連携して治療を行っています。内視鏡治療・抗がん剤・放射線治療が適切と判断される場合には各科で治療を行い、手術が適切な場合には外科で治療を行います。手術を行う場合、診断後、すぐに手術を行う患者さんと手術前に化学療法(抗がん剤治療)を行ってから手術を行う患者さんがおられます。がんの進行度やお身体の状態から判断します。また患者さんやご家族の希望も大切になってきます。是非、医療スタッフと一緒にご自身にとって適切な治療方法を決めていきましょう。

患者さんによってはリハビリを治療の前から開始します。術前にリハビリをすることで体力が良好な状態で手術を受けていただき、手術による状態の悪化を予防できると考えています。
患者さんが無事に安心して治療を受け、退院できるよう外科の医師だけでなく、手術中の麻酔をかける麻酔科の医師、看護師、手術の後の食事の状態をみる栄養士など、多くの職種がサポートします。
外科外来を受診されてから化学療法(抗がん剤治療)や手術を行うまでの期間は2~4週程度であり、治療の前日、前々日に入院をしていただく流れになります。
食道がんの診断方法や治療法については、以下で解説しておりますので、ぜひご覧ください。
食道がん手術にはどんな方法がありますか?
食道がんの手術は大きく次の3つに分けられます。
- 開胸・開腹手術(むねとおなかを大きく切開する方法)
- 胸腔鏡・腹腔鏡手術(複数の小さな傷から器具を挿入する方法)
- ロボット支援手術
1.開胸・開腹手術
胸と腹部を大きく切開し、長い器具を用いて行う従来の手術方法です。手術時間は比較的短い一方で、肉眼での操作となるため細かい血管や組織が見えにくく、一般的に出血量が多くなる傾向があります。また傷が大きいため、術後の痛みが強いことが報告されています。
2.胸腔鏡・腹腔鏡手術
5~12mm程度の複数の小さな傷から鉗子を挿入して行う低侵襲手術です。
カメラを挿入して観察するため細かな組織まで見えやすく、開胸・開腹手術より出血量が少ないと報告されています。
一方でまっすぐな鉗子を用いるため、可動性に制限があり、難易度が高く、手術時間は長くなる傾向があります。内視鏡手術の専門の学会が内視鏡手術を安全かつ適切に行うための確かな技術を持つ医師を認定する制度を設けています(日本内視鏡外科学会 技術認定取得者)。当科では認定を受けた医師が手術に参加するようにしています。

3.ロボット支援手術
数か所の小切開からカメラと器具を挿入し、医師がロボットを操作して行う手術です。世界的に広く普及している「ダヴィンチ」は、高精細3Dカメラ・手ぶれ防止機能・人の手以上の可動域を備えており、精緻な操作が可能です。これにより、がんの根治性向上や術後の回復促進が期待できます。

しかし、触覚や広い視野を欠くため難易度が高く、導入には専門の学会が認定する医師(プロクター)の指導が必須です。また、食道を専門にする医師(食道外科専門医)が手術に参加することが求められます。 当院は京都府内でロボット支援食道がん手術を行っている病院の一つであり、9割以上をロボット支援手術で実施しています。

新しいロボット「ダヴィンチSP」とは?
2023年に登場した「ダヴィンチSP」は、従来のように複数の傷が不要で、1か所の小さな切開からカメラと3本の器具を挿入し、体内で展開して手術を行います。
傷が少ないため術後の痛みが軽減される可能性があります。
当院は2023年に関西で初めて同機種を導入しました。

京都府内でダヴィンチXiとダヴィンチSPの両方を導入している病院は2025年12⽉時点では当院のみで、患者さんに適切な機種を選んで手術を行っています。

当院のロボット手術について解説した広告が京都新聞 令和7年11月3日付朝刊に掲載されました。
また、京都新聞令和7年12月22日付朝刊に、傷が小さいロボット手術についての講演の内容が掲載されました。
▼手術の後は普通に暮らせますか?仕事はできますか?
食道の手術の後には、食事量が減って、栄養状態が悪くなることがあります。手術後3ヶ月や半年くらい経つと、食事量が元の量近くまで自然に回復していくことが多いですが、そこまでなるべく体力を落とさないように、栄養やリハビリの治療を受ける必要があります。寝たきりで動けなくなるまでの状態になる方はほとんどいませんが、適切な栄養やリハビリの治療を受けないと、生活、仕事、運動、趣味などに影響がでることがあります。また長期間、栄養の状態が悪い状況が続くこともあります。
外科医師とともに、歯科医師、栄養士など専門性をもった様々な職種が協力することで、手術前から手術後まで、生活や食事に対するケアやサポートができる体制を整えています。私たちは、がんを治し、患者さんが手術後も元気に暮らし、趣味を楽しみ、お仕事に復帰できるよう、体力をなるべく落とさないことに注力しています。
また、患者さんには、手術後の目標を立てていただき、ご自身でもリハビリ等に取り組むことをお願いしています。趣味やお仕事の内容によって、復帰できる時期は異なりますので、担当スタッフまでお尋ねください。


▼手術の後は痛みますか?
一つの傷から手術を行うロボット機種(ダヴィンチSP)には、カメラを自由に曲げることができるなど、より精密な手術を行ううえでのメリットがあり、そのうえ、傷が少なくなるので、痛みが少なくなることが期待されます。 手術の後の痛みが小さくなるように、麻酔を担当する医師が、全身麻酔をかけた後に、おなかの壁に痛み止めの注射をします。そして、手術の後には痛み止めの点滴を組み合わせて投与します。がんを治すとともに、なるべくからだにとって優しく、痛みが少ない手術を提供させていただきたいと考えています。
▼分からないことや不安な気持ちを相談したいです
当院では、がんを経験された方、治療中のご家族を持つ方が、治療を受けながら考えていること、生活の中で抱えている気持ちや不安など、安心してご相談いただける窓口として「がん相談支援センター」を設置しています。
がん専門相談員(看護師、社会福祉士)がお話を伺い、気持ちや情報の整理をお手伝いし、解決の糸口を一緒に考えていきます。
相談内容はご本人の許可なく第三者(担当医等含む)に伝えることはありません。匿名での相談も受けており、秘密厳守で相談に応じますので、安心してご相談ください。

食事のサポート
がん患者さんが少しでも食べやすいものを一緒に考え、食事をお出ししています。こうした経験から、食事への悩みを持つ患者さんやご家族に向けて、食事の工夫とレシピを集めた症状別の食事パンフレットを作成し、どなたでもご覧いただけるようホームページに掲載しています。
また、がん患者さん向けの栄養食事指導を実施しています。栄養指導を受けていただくためには、医師の診察と栄養指導の予約が必要です。ご希望の方は主治医にお気軽にご相談下さい。
▼手術の後はどれくらいで退院できますか?
食道がんの手術後の退院までの期間は15~21日程度で、その後は通院治療に繋げていきます。手術後に食べ物の通り道がうまく繋がらない縫合不全や感染症といった合併症が起こったり、再手術を行った場合は、入院期間が長くなります。当院では、手術のメリットとともにデメリットについても、手術前に十分にご説明をさせていただき、ご理解された後に手術を行っています。
▼進行している食道がんを治すことができますか?
がんの進行度(ステージ)によって、5年後、10年後も生きている確率(生存率)が異なります。来院されたら、まず進行度を決めるために、内視鏡検査やCT検査を受けていただきます。がんの状態や進行度によっては、手術ではなく、内視鏡(胃カメラ)治療、抗がん剤治療、放射線療法を選択した方がよいこともあります。当院では、消化器内科、放射線科、腫瘍内科にそれぞれの専門家を揃えています。他の治療方法より手術を受けていただいた方が、生存率などにメリットがある患者さんには、手術をおすすめします。
また、がんの状況によっては、抗がん剤や放射線治療を行ったあとに手術を行うことがよいこともあります。さらに、最初の診断では、がんが取り切れないと判断した際も、抗がん剤や放射線治療がよく効いて、がんを切り取ることができるようになることもあります。お身体とがんの状況をよく把握し、適切な治療法を選択していくことがとても重要です。お身体やがんの状況、また患者さんのご希望は様々です。どういった治療法がよいのか、スタッフまでお尋ねください。
▼高齢でも手術できますか?
最近では70、80歳代といった高齢の患者さんが増えてきています。
高齢の患者さんの特徴は、個人個人によって体力や認知の機能が異なっていて、年齢だけでは手術を実施できるかどうかを判断できないことが挙げられます。当院では、手術前に栄養や体力の状態を評価して、手術を受けられるかどうかを判断しています。手術のメリット、デメリットについてご本人やご家族にお伝えし、手術を受けられるかどうかを看護師など他の職種と一緒に相談させていただきます。手術を希望された場合は、体力が落ちないように、手術の前から手術の後まで栄養士や理学療法士がサポートする体制を整えています。患者さんご自身にもリハビリに積極的に取り組んでいただくことも大切です。
まとめ
当院では、がんの根治性を高めるとともに、術後の痛みを抑え、早期の社会復帰と生活の質の向上を目指し、精緻なロボット支援手術と多職種の連携支援を行っています。
受診をご希望の方は、かかりつけ医に紹介状をご依頼いただき、医療機関から、または患者さんご自身で以下の方法からご予約ください。
≫医療機関からご予約を取られる場合(電話、FAX、webでの予約が可能です)
https://www.kch-org.jp/medical/chiikirenkei
≫患者さんがご自身でご予約を取られる場合(電話での予約が可能です)
https://www.kch-org.jp/patient/outpatient/shoukai





がん患者さんとご家族のための食事のヒント