京都市立病院看護部

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看護実践・部署紹介

看護実践

看護実践の指標

~多職種と協同した、転倒による損傷の予防に関する取り組み~

【安全の視点】

 近年高齢患者の入院の増加に伴い、高齢者の転倒転落発生率が増加し、高齢者の特徴(ADL能力の低下、歩幅の減少、骨密度の低下等)より、転倒転落時には損傷のリスクも高まる傾向にあります。転倒転落が発生しやすい場面は、排泄行為、移動動作が最も多くなっています。当院では転倒転落予防に安易に行動制限をするのではなく、患者の尊厳を守り、自宅に近い方法で日常生活を過ごせるよう取り組んでいます。  

 個別のニーズに合わせた多職種による専門的なリスク評価と対策を多職種で検討し実施しています。また、医療者だけでなく、患者・家族より入院前の状況などを聞き取り、転倒転落対策に参画いただくことで、損傷による入院生活の延長を予防するよう取り組んでいます。

《令和6年度の取り組み概要》

・ 患者の個別に合わせた環境調整と、調整している環境内容を多職種と共有(図1)

(図1)

・ 多職種が共通認識で転倒転落リスクを正しくアセスメントするための定義の統一など、マニュアルの見直し。多職種カンファレンス・多職種ラウンドの推奨。(図2)

(図2)

 

 

【倫理の視点】

 医療を取り巻く環境は社会の変化とともに大きく変わり続けている。医療技術の進歩、超高齢化社会の進行、多様な価値観の尊重、労働環境の変化など、さまざまな要因が看護の現場に影響を及ぼしている。こうした変化の中で看護師が適切に患者や家族に寄り添うケアを提供するためには高い倫理観が重要である。看護師は患者の言葉に耳を傾け、今後の病状や治療を予測しつつ、患者が生活の中で大切にしている事を引き出し、患者が納得いく選択枝にたどり着く事を支える重要な役割がある。令和6年度診療報酬改定で入院科通則が改定され、人生の最終段階における適切な意思決定の推進と身体拘束を最小化にする取り組みが求められ倫理の醸成は重要である。

《令和6年度取り組み内容》

 看護部倫理委員会では昨年度と同様に「インフォームドコンセントに求められる看護職の役割を学び、看護実践に活かす」と目標設定を行ない、倫理的課題について考える力と看護実践能力を身につけるための事例検討を中心に活動を行なった。リンクナースは自部署でファシリテーターとなりグループワークを実践し、患者一人ひとりの尊厳を重視した意思決定支援を深める場づくりを行なった。

 身体拘束最小化について日々の抑制カンファレンスシートをリンクナースがデータ管理を行い分析を行っている。そして1回/月「身体拘束ゼロday」の取り組みは多職種とカンファレンスを行い病棟全体で30分でも解除時間を設ける事で看護の力で患者の尊厳を守るケアを推進している。

 

 

 

【地域との協働の視点】

  地域包括ケアシステムの推進に伴い、病院完結ではなく地域完結の医療にシフトしています。地域の急性期病院として地域との協働を強化し、患者の生活を支援することを重視しています。各病棟の入退院支援看護師は患者支援センターと連携し、患者・家族が安心して入院生活が送れるように入院前から面談を実施し、治療や検査、療養生活の説明を行っています。その中で、事前リスク評価等を行うことで、院内多職種のみならずケアマネジャーや訪問看護師など、地域の関係職種とも連携・協働し退院後を見据えた支援を早期から行っています。

 各病棟でも受け持ち看護師が中心となり、入院早期よりケアマネジャーと連携しています。在宅での暮らしを確認し、患者家族の望む生活の場に戻れるよう患者の個別性を重視した意思決定支援を行っています。そして、退院前には退院前カンファレンスや退院前訪問、また、退院後訪問を行い、地域・外来・入院に係わる多職種がシームレスに繋がるように取り組んでいます。

《令和6年度取り組み事例》

*  訪問看護師と当院入退院支援看護師とで事例を通した看看合同カンファレンスを開催

* 退院前訪問10件(2024年12月時点)

(事例)

 ・大腿骨転子下骨折で手術、3階居住のため片松葉を使用しての昇降状態確認。室内の手すり位置確認。退院後のサービス確認。

 ・慢性腎臓病で腹膜透析導入、家屋状況の確認を行った。APD実施場所は2階、排液場所は1階であり、患者と共に退院までの計画を立案した。

 ・糖尿病性足壊疽で緊急入院、独居・高齢であり在宅チームと住環境整備の調整を実施。必要物品の配置場所も検討した

* 退院後訪問9件(2024年12月時点)

(事例)

 ・膀胱癌でストマ造設、実施した退院指導の評価・課題抽出目的で訪問。自宅環境は問題なくADLも改善。ストーマトラブルもなかった。

 ・膀胱癌ストマ造設、パウチ交換は家族が実施、訪看が支援している。行動意欲低下しているため、デイサービスを検討した。

 ・慢性腎臓病でAPD導入、排液不良でCAPDに変更となった。退院後トラブルなく経過していた。K摂取過多について食事の工夫を説明した。

 

災害支援ナース

 災害支援ナースとは、看護職能団体の一員として、被災した看護職の心身の負担を軽減し支えるよう努めるとともに、被災者が健康レベルを維持できるように、被災地で適切な医療・看護を提供する役割を担う看護職のことです。都道府県看護協会に登録されています。災害支援ナースによる災害時の看護支援活動は、自己完結型を基本としています。(日本看護協会ホームページ引用)

 当院は、災害拠点病院の役割として、数名の看護師が災害支援ナースに登録しています。
平成30年7月の西日本豪雨災害では、JMAT京都メンバー(医師、看護師、事務職員)で、7月18日・19日、倉敷市の災害支援に2名の看護師が参加しました。
活動内容は、診療介助、部分的な保清や、患者の思い等を傾聴し、疾病予防などの助言を行い、環境整備などを行いました。

クリニカルパスリンクナース

 クリニカルパスとは治療や検査にあたってどのような処置を行うのか、その実施内容や順序を入力したスケジュール表のことです。 医療サービスの提供には多職種間の連携が不可欠であり、質を維持しながら効率的なサービスを行うには、治療や看護の標準化や最適化が欠かすことができません。 治療や看護を標準化し、より良い医療サービスが提供できるように、当院でも、各部署で『クリニカルパスリンクナース』が活動し、適切でガイドラインに沿ったクリニカルパスが運用されるよう支援しています。

クリニカルパスリンクナースの役割

クリニカルパスのPDCAサイクルを確立し、ガイドラインに沿ったクリニカルパスの運用を図る。 クリニカルパスのPDCAサイクルイメージ

 

感染対策リンクナース

病棟・部門から1名の看護師が、所属部署における感染対策活動を推進する役割モデルとして日々活動しています。

活動内容
1.感染防止対策マニュアルに準じて正しい感染対策が実践できるよスタッフを指導しています。
2.手指衛生遵守の向上にむけて、部署で使用している手指消毒薬の使用量を毎月測定し、適切なタイミングと方法で手指衛生が実施できているか直接観察により、部署の特性に合わせた指導を行っています。
3.所属部署における感染対策上の問題点を明確にし、ICT(感染制御チーム)と連携しながら改善に向けて取り組んでいます。
4.地域へ戻る患者さんやご家族、サポートする人へ向けて、患者さんの生活や支援体制に合わせた感染対策の介入や指導を行っています。
5.院内・外の感染対策に関する研修会や学会へ参加し、知識の向上と新しい情報を取り入れ、現場で活用しています。
6.部署内の環境整備に努め、安全で清潔な労働環境・療養環境を保つよう取り組んでいます。

■部署ラウンド
  年3回実施(ラウンドテーマ:個人防護具の適正使用、手指衛生、尿道留置カテーテルや中心静脈ライン管理)

 

入退院支援リンクナース

 在宅療養への円滑な移行や地域生活への復帰に向けた取り組みが重要視されるようになり、患者さんが住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう看護の連携体制の構築が求められています。当院では各部署に入退院支援リンクナースを配置しています。入退院支援リンクナースは、患者さんの思いを大切に、患者さん・ご家族が安心して療養の場を選択し、療養が継続していけるよう支援しています。

入退院支援リンクナースの役割

実践内容

部署でのリスクマネージメント

部署リスクマネージャーの役割

安全な部署環境づくり

医療安全対策の実働部隊として、部署安全マネージャーとしてリンクナースが中心となり医療安全対策活動の実践、医療安全教育を行っています。 部署安全マネージャーは月1回リスクマネジメント部会を持ち医療安全レポートの点検分析を行い分析結果から対策を検討していますが、その他に各部署の医療安全に対する課題について取り組みを行ったことの報告もしています。

6D病棟での取り組み

6D病棟は消化器内科、血液内科の病棟で、そこで部署安全マネージャーは状況を以下のように分析しました。

  1. 排泄目的で移動される際の転倒が多い
  2. 筋力低下がある
  3. 転倒転落される患者には薬剤(眠剤・麻薬)の使用歴はなく意識レベル低下を認めない患者が多い。

  つまり、自ら排泄行動が行える患者の転倒が多いということがわかりました。そこで、排泄パターンを把握し排泄誘導することによって転倒予防ができるのではないかという仮説を立て、対象患者には看護計画を立て実践していきました。 取組を開始し毎月5~7件あった転倒転落件数が2~3件に減少しておりアクシデント事例はなく経過しています。

組織改善!第1歩目は・・・?

転倒転落のほかにも薬剤確認方法、内服自己管理の手順について、患者誤認0を目指した取組ワークシートの利用についてなど各部署で取り組んでいる課題は多岐にわたります。 どの取組も基本となるのは「医療安全レポート」と安全に対して部署内での活発な意見交換です。そして、そこにも部署安全マネージャーがひと役かって活動しています。

救急室部署安全マネージャーの”ツブヤキ”です。 診療部・放射線技術科とヤイヤイ言いながら他部門と連携をとっていく。 あれ?いいのかな?これど~思う? いや~危なかったわ~。 などなど何でも声に出していける環境づくりをしていきたいと思います。

 

 

部署紹介

3A病棟 :病床数 42床(循環器内科27床 糖尿病代謝内科11床 皮膚科2床 腎臓内科2床)

 3A病棟では患者が安心・安全に急性期治療が受けられ、退院後も住み慣れた環境で療養生活が送れるように患者の意志決定支援、在宅移行支援に努めています。

今年度の部署目標の1つである「患者情報、看護実践を共有することで、患者の安全を守り、くらしを支える」ことを達成するために、外来・地域と連携し、患者を地域で支える在宅関係者と積極的に関わっています。退院支援シートを有効に活用し、入院中の状況、退院後課題となることを外来担当看護師と共有し、療養指導の充実を図っています。

 循環器内科では、昨年度より、心不全患者が入退院を繰り返すことなく暮らせるように、多職種がチーム医療で支える心不全チームの活動を開始しています。対象者は、生涯に亘る生活管理が重要となる若年心不全患者、初発心不全、社会背景が複雑な患者等から抽出し、毎週1回症例カンファレンスを開催しています。

 糖尿病代謝内科は、外来で療養指導、フットケア等も担当しています。主に、2型糖尿病、1型糖尿病、妊娠糖尿病に対し、食事・運動療法から最新の薬物療法、慢性合併症の管理、さらに急性合併症の救急対応まで幅広く行っています。また、退院後の初回外来受診時に看護師が生活状況の聞き取りをしています。2024年4月から12月までに退院後初回外来の患者39名に療養指導を実施しました。入院中に関わっているスタッフが担当することで、退院後の療養生活の中で困難となっていること(食事・運動の内容、内服管理方法、自己血糖測定・インスリン自己注射の方法など)を安心して話せる環境を作っています。フットケア外来では、2024年4月から12月までに501名の患者に対応し、足のケアを行い、皮膚や爪トラブルの予防とセルフケア支援を行っています。

 また、人材育成として、心不全療養指導士の資格取得、糖尿病重症化予防(フットケア)研修受講などのキャリア支援を行いました。

3B病棟(集中治療室:ICU) :病床数 8床

 ICUでは、内科・外科を問わず、重篤な急性機能不全の患者に対して幅広く対応しています。2023年度は1,094名の患者さんを受け入れました。乳幼児から高齢者まで多様な疾患の集中治療期における合併症を軽減し、早期離床、集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)予防のため、早期から積極的なケア介入をしています。2024年度は、特に多職種で早期離床に取り組みました。また、治療が優先になりがちなICUにおいて、医療機器に囲まれた患者さんの声や思いに気持ちを寄せ、必要なケアをタイミングよく提供することを目的に、毎日のカンファレンスを通してチーム医療の推進に努めています。

 患者情報や状態の把握を迅速に行い、患者の状態変化に合わせた高度な質の高い看護を実践するためのスタッフ教育にも力を入れています。複合疾患を持つ高齢患者が増加すると共に、治療の進歩に伴う医療機器の進化が加速し、より一層看護スタッフは高度な知識や技術が求められます。そのため、ICUでは忙しい業務の中でも効率的に学べるよう、クリティカルケア認定看護師が中心になり、様々なツール(webシステム等)を活用しながら学びを実践に繋げています。

【2023年度実績】
・ウォーキングカンファレンス:平日朝開催
・術前カンファレンス(予定手術患者対象)
・ケアカンファレンス:予定外入室患者対象:213件/年
・学習会:29回/年
・BLSトレーニング:全スタッフが実施/2年毎(うちインストラクター:8名在籍)
・MET(急変対応チーム)ラウンドの参加(1回/週)
・ECT(倫理コンサルテーションチーム)介入カンファレンス:4回/年

 

患者さんの思いを大切に
 ICUでは、患者カンファレンスを実施する際、臨床倫理の4分割表を活用しています。緊急入院患者の約半数(48%)を対象にしたケアカンファレンスを実施しました。(2023年度)
また、2024年度は患者経験価値調査(PX)を導入するための活動を推進しています。患者に寄り添ったケアとは?知識や技術だけではなく、患者の思いを支える看護を実現するために日々奮闘しています!!

 

3D病棟 脳卒中センター:病床数 37床(脳神経内科16床 脳神経外科15床 内分泌科6床)

 脳神経系・脳卒中疾患患者を中心に急性期患者を受け入れており、医師をはじめ多職種と連携を取りながら的確な観察と、適切な治療を受けられるよう援助をしています。また、脳卒中疾患では、発症に伴い麻痺や高次機能障害などが出現し、その後の生活に支障をきたすことが多くあるため、治療の段階や病態管理、残された力を最大限に活かせるように、看護ケア介入が重要となります。嚥下機能訓練、食事援助、二次感染予防、排泄行動の確立、せん妄対策、認知症への対応、安全な環境整備、リハビリの推進など、看護師は、「その人らしく」残された力をより引き出し、患者さん自身の力で生活できることを目指して看護をすすめています。2024年より脳卒中相談窓口を開設し、脳卒中患者および家族への情報提供と相談支援を行っています。

 内分泌内科では電解質異常や放射線治療など専門的な治療を行っており、退院後の生活指導が重要になるため、外来と連携し継続した看護を行っています。

 入院直後は症状悪化や合併症を起こさないように、病状が落ち着いたあとは退院後の生活を見据え多職種が専門的な視点で意見を出し合いカンファレンスを行っています。この多職種カンファレンスでは、院内だけでなく近隣の病院から医師、看護師が参加しています。当院から地域へシームレスな連携ができるように心がけています。

【患者のQOLを保ち、生活能力を引き出す看護】

 

4A病棟 :病床数 36床(小児期26床 NICU6床 GCU4床)

 0歳から15歳までの小児内科領域全般の疾患、および外科、耳鼻科、整形外科、歯科、形成外科等の周術期のこども達を受け入れています。また、NICU・GCUも小児科病棟と統合しており、出生後から乳児・幼児・学童期と継続してサポートできる体制を整えています。小児科外来も同じ看護スタッフが担当しているので、退院後も地域医療と連携し、患者さんの生活を支援しています。血液疾患や慢性疾患など退院後もフォローが必要な子どもに対して、退院後の様子を確認し必要時は関係機関、学校などとカンファレンスを実施しています。退院支援看護師と担当看護師が中心になり、2024年度は15件実施しました。ZOOMなどを活用し往診医や訪問看護師・ヘルパー・児童相談所スタッフ等多職種で話し合うことが出来ています。また、看護専門外来として移植後フォローアップ外来も担当しており、進学や就労などAYA世代の悩みに対応しています。

 4A病棟では、小児看護専門看護師・新生児集中ケア認定看護師をはじめ、造血細胞移植コーディネーターや造血細胞移植後長期フォローアップ専門外来や小児在宅支援指導者など様々な分野で専門性を持ったスタッフが活躍しています。看護師育成に対しては、疾患の学習だけでなく、24時間小児救急を受けているため急変対応実践・外来トリアージや、ハイリスク妊産婦からの出生に備えて、NCPR専門コース取得などもすすめています。

 入院しても、学習や遊びなど、子どもの経験を大切にしたいと考えています。2024年度は、趣旨に賛同いただいた企業と一緒に子どもへの遊び支援を行いました。プログラミング教室やネイルサロンの実施など、参加する子どもが遊びの中から、自分で考え達成感を持てるように支援しています。付き添い家族の支援にも取り組んでいます。病棟でのヨガ教室の継続や、栄養科と連携し付き添い食提供も開始できました。子どもの入院環境を支える家族を含めた支援を、スタッフも楽しみながら、地域を巻き込み実践している病棟です。

4B病棟 :病床数 40床(産婦人科26床 乳腺外科8床 血液内科6床)

 4B病棟は、産婦人科、乳腺外科、血液内科の女性のための混合病棟です。

 産科は地域周産期医療センターの役割を担っており、糖尿病や甲状腺疾患、てんかん、精神疾患などの合併症管理を必要とする身体的ハイリスク妊産婦や、社会的ハイリスクの妊産婦を多く受け入れています。

 婦人科と乳腺外科は疾患の診断時から多職種で継続的に介入を開始し、患者が安心して手術療法、化学療法、放射線療法など集学的な治療が受けられるよう支援を行っています。今年度の取り組みとして、ライフスタイルと治療再発等の段階で患者の思いを確認し介入するため、外来で医師によりIPOS用紙を患者へ説明、配布依頼した。7月~12月67件回収した。(表1)聴取内容では患者の気がかりや説明内容についての不安が多く(表2)、患者の意思決定支援などの看護ケアにつなげています。

 また、がん薬物療法により出現する脱毛予防ケアとして、頭皮冷却装置を使用し(写真1.2)、2023年度138件、2024年度104件実施しました。患者からは、「髪が抜けなくて良かったです」「帽子をかぶらなくてよくなった」という声があり、脱毛予防だけでなく、早期発毛を促すことに繋がっています。

 産科では、今年度より無痛分娩を開始しました。多様な妊産婦の希望にこたえられるよう多職種で勉強会やシミュレーションを重ね、計画的無痛分娩を2例実施しました。「痛みが緩和され、穏やかな気持ちで出産に臨めた」と良い感想がありました。今後は麻酔科管理や夜間体制など検討し安全で安心できるお産を支援していきたいと考えています。

5A病棟 :病床 52床(整形外科50床 歯科口腔外科2床)

 5A病棟は整形外科・歯科口腔外科の急性期の病棟と、整形外科外来を担当しています。

整形外科では人工股関節・人工膝関節の置換術や大腿骨近位部骨折、脊椎疾患手術などを受ける患者が入院しています。歯科口腔外科ではリスクの高い抜歯や歯根嚢胞、上下顎骨腫瘍など手術を行っています。

 2024年度の整形外科患者の平均年齢は69.6歳ですが、後期高齢者の手術件数は年々増加しています。治療後の生活を見据え、入院時には多職種でカンファレンスを実施し、入院期間、目標とする退院先、ADLなど情報共有しています。術後1週間目には、患者のADL回復状況を確認し、退院後の社会福祉資源の活用やリハビリ転院など提案しながら、退院後の生活での不安点など患者と共に考え解決できるよう関わっています。適宜、退院前訪問を行い、患者・家族、院内外の多職種と共に自宅の環境を確認し調整を行っています。また、退院後には、入院中説明した内容が理解されているか、生活で困っていることはないかなど外来受診時に患者から聴取し、継続したケア介入を行っています。

 2022年度より、日々変化する患者状態を多職種が把握し、安全な患者搬送や療養環境が提供できるよう、ベッドサイドにADL表を表示しています。ナースコール対応が速やかに行え、ベッドサイドに補助具が放置されることも少なくなり、患者の転倒転落件数も減少しました。また患者自身も自立に向け前向きな姿勢でリハビリに取り組めています。その他、個室への手すり設置や、患者の見当識改善のため病室に時計を設置するなどの療養環境の整備も行っています。

 

5B病棟 :病床数 21床(血液内科21床)

 5B病棟は、血液疾患の患者の化学療法看護、造血幹細胞移植看護を実践する【血液内科病棟】と、外来で化学療法を受ける患者への看護を行なう【外来化学療法センター】を担当している部署です。がん化学療法看護に強みを持つ病棟として、患者一人一人の状態に応じた有害事象の観察や早期発見・早期対応を行い、セルフケア支援や意思決定支援、家族ケアを実践しています。

 2024年度の部署目標は「実践している看護や患者の看護過程から互いに学び合い、対話を通じて質の高い看護実践につなげる」として、チーム活動を進めています。がん治療の進歩により、高齢でも化学療法を受けられる患者が増加している一方で、独居・高齢世帯の増加による医療介護需要の増加や、入院中の身体機能の低下が課題となっています。

 【血液内科病棟】では、疾患や治療による倦怠感や血球減少に伴う出血リスクの増加があることや、入院が長期に及ぶことによる筋力低下、抗がん薬による末梢神経障害など、患者の生活力維持に困難をきたす要因が多くあります。入院中の日常ケアの見直しを行ない、多職種との連携を強化しながら、患者が住み慣れた場所で治療を継続しながらその人らしい生活を送れるよう支援しています。治療に伴う身体の変化を患者自身が理解し、医療者と一緒に安全対策を話し合うなど、治療やケアに参加してもらうことで、より効果的な転倒予防対策につなげています。

 【外来化学療法センター】では、70歳以上の患者全員に高齢者機能評価(G8)によるスクリーニングを実施し、多職種による専門的な介入や地域連携強化に早期から取り組み、患者にとってより安全な治療環境を作っています。受け持ち患者への専門的な看護実践をテーマにリフレクションやカンファレンスの機会を持ち、スタッフがお互いに学び協力し合い、全員が自信を持ってケアを提供できることを目指しています。

 

5E病棟 :病床数 14床(緩和ケア科14床)

【5E病棟では、さまざまなつらさを和らげるためのケアをしています】

 身体や心の苦しみだけでなく、社会的な悩みもサポートし、自宅での生活に戻るための支援や、最期を迎えるためのケア、一時的な入院(レスパイト入院)も受け入れています。

 また、患者さんとご家族の負担を軽くし、大切な時間をその人らしく過ごせる場所を提供することが私たち看護師の役割です。そのために、多職種が協力し、患者さんの希望をできる限り叶えられるよう努めています。

 私たちは、「小さな願いをかなえる」ことを目標に、日々のケアを大切にしながら実践を重ねています。そのため、朝のモーニングラウンドでは、患者さんの安全を確保するとともに、快適に療養できる環境を整えています。

 病棟では、さまざまな症状に対応した看護ケアを提供していますが、特に痛みを和らげる薬剤を使用すると、転倒のリスクが高まることがあります。その中でも、「口から食べたい」「自分の足でトイレに行きたい」といった患者さんの意思を尊重しつつ、転倒を防ぐためのケアを工夫しています。

 最近では、認知症のある患者さんや、家族との関係が希薄になりがちな患者さんが増えており、社会的なつらさを抱えるケースも多くなっています。そのため、カンファレンスを通じて、多様な価値観を尊重し支えるケアが求められています。このような関係性への支援や家族へのケアも、患者さんが最期まで充実した人生を送るために、看護師が担う重要な役割の一つです。

 

6AB病棟 :6A病床数 34床(救急科・消化器内科)・6B病床数 22床(感染症科 うち結核12床)・内視鏡センター

 2年前から内視鏡センターが1看護単位に含まれるようになり、病棟-内視鏡センター間の連携や他職種との協働を意識して活動しています。さらに、6AB病棟には摂食嚥下障害看護・認知症看護・感染管理と3名の認定看護師が配属されており、横断的な活動に加えて、自部署では専門性の高い看護実践やスタッフ育成に携わり、ケアの質向上に向けて努めています。

 6AB病棟の2024年度部署目標は、『患者さんの今とその先を見据えた看護を実践する』としました。高齢者や低栄養状態など様々な支援が必要な患者に対し、口腔ケアや排泄ケアなど退院後の生活を見据えた日常生活上の課題にも着目した看護実践を推進してきました。

 口腔ケアでは、入院時から舌苔の多い患者に対して投薬状況を把握したうえで適切なケアを検討し、誤嚥性肺炎の予防も考慮した個別性のある口腔ケアを実践してきました。舌苔が改善した患者からは「ご飯の味が感じられて、美味しい」という言葉が聞かれ、食事摂取量の増加から栄養状態の改善、活動量の増加から自宅退院に向けたADL向上にもつながりました(図1)。

 また、入院中だけでなく退院後も日常生活の中で転倒転落防止対策が継続できるよう「セラピスト協働カンファレンス」を開始しました。担当セラピストと看護師が、転倒転落リスクが高くリハビリテーションの早期介入が必要な患者を選定しベッドサイドへラウンドします。患者さんもカンファレンスに参加し、生活に合わせた安全な療養・生活環境づくりと筋力の維持向上を目的とした運動プログラムを一緒に考えています。セラピスト協働カンファレンスの開始後にみられた効果として、リハビリの早期介入、セラピストの視点も含めた適正な身体拘束を検討することで、身体拘束解除率が改善しました(表1)。

表1【セラピスト協働カンファレンス:開始前令和6年4月~6月 開始後令和6年7月~9月】

 

転倒者率 身体拘束解除率 リハビリ処方率

危険行動のある患者

カンファレンス開始前(102名) 4.9%(5名) 27.3%(3名) 51.9%(53名) 110名
カンファレンス開始後(118名) 6.7%(8名) 33.3%(7名) 65.3%(77名) 278名

 

6C病棟 :病床数 50床(消化器外科35床 消化器内科12床 泌尿器科3床)

 6C病棟は、消化器センターとして稼働しています。消化器内科は、短期間入院の内視鏡検査を受ける患者を中心に受け入れています。

 消化器外科は腹腔鏡下手術や、ロボット支援手術も年々増加し、胃癌・結腸癌・直腸癌だけでなく、食道癌・膵臓癌・肝臓癌・胆道癌のような侵襲の大きい手術にもロボット支援手術が行われています。術後は合併症予防のため、早期離床に向け麻酔科医師・薬剤師・管理栄養士・手術室と病棟看護師で構成された術後疼痛管理チームによるAPSラウンドを実施し、疼痛評価とコントロールを行い、リハビリ科と連携して早期離床に繋げています。術後当日から翌日までに離床できている離床率は85%以上と維持できています。手術前は「術後の回復のためのパンフレット」を使用し、術後合併症予防、不安の軽減に努め、早期に患者が生活の場へ戻れるよう支援しています。特に、ストーマ造設手術を受ける患者には、ストーマモデルを利用し、ボディイメージの変容や実際のケアも体験し、不安や心配事に寄り添いながら在宅へ移行できるよう支援しています。また、食道癌の手術を受ける患者は、術前から腸瘻管理の動画を視聴し、術後や退院後の生活がイメージできるように支援しています。他には、化学療法件数も増加しており、学習会や標準化した教育で安全に化学療法が実施できるように取り組んでいます。

 このように高度な手術や治療を受ける患者は、近年高齢化が進み、入院患者の平均年齢は72歳を超えていることから周術期看護の実践に加え、専門性の高い高齢者看護に取り組んでいます。入院時からせん妄リスクアセスメントを行い、多職種で早期介入することで術後せん妄の増悪や転倒転落の予防に繋げたり、高齢者や認知症患者が安心して入院生活が送れるよう、音楽療法やレクリエーションを取り入れたりしています。退院後は初回外来受診時面談や退院前後訪問を積極的に行い、入院中に実施したケアの妥当性や継続性を評価しています。

 私たちは、日々目の前にいる一人ひとりの患者、家族の思いを大切にしながら看護を提供しています。

 

6D病棟 :病床数 48床(泌尿器科22床 腎臓内科14床 血液内科12床)・血液浄化センター18床

 6D病棟は、患者の生活軸を中心に「7つの看護」の実践と可視化に取り組んでいます。入院前から退院後の生活を見据えて関わり、地域での患者の暮らしを支えるために院内外を問わず多職種と連携し、看護を繋ぐことを目指しています。

 *7つの看護とは「周術期看護」「セルフケア看護」「がん化学療法看護」「終末期看護」 

 「透析患者の看護」「退院支援」

 血液内科では白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫など、主に化学療法を受ける患者を中心に受け入れています。患者に合わせた様々なレジメンがあるため、治療内容や方法・副作用などを理解し、安全に治療を提供していく必要があります。そのため、化学療法を受ける患者に対して、毎朝、血液内科医師と共にカンファレンスを行い、治療について確認することで安全な治療の提供に取り組んでいます。

 泌尿器科では手術支援ロボットによる低侵襲手術が多く行われていますが、術後疼痛は「ゼロ」ではありません。「痛みを我慢せず早期離床を目指す」ことを軸に、積極的な疼痛管理に取り組んでいます。膀胱全摘回腸導管造設患者には、術前にストーマの模擬体験を実施しています。患者は生涯ストーマパウチ交換が必要となるため、術後のボディイメージや日常生活の変化を家族とともに経験し、身体的・精神的にスムーズに受け入れる準備に繋げています。また退院後の生活環境やストーマ管理状況を確認するために退院後訪問を行い、必要時、訪問看護師の同席を依頼することで、地域との継続看護に繋げています。

 腎臓内科では末期腎不全患者が今後の治療法を選択していくために、療養選択外来で意思決定支援を行っています。対話を通して患者ひとりひとりの生活環境や習慣・好み・思いなどを知り、患者・家族が納得して最善の治療法が選択できるまでサポートしています。

腹膜透析導入患者は自宅での治療となるため退院前訪問を行い、自宅環境や整備状況を患者・家族とともに確認しています。退院後は在宅治療が円滑に行われその人らしく過ごせているか退院後訪問を行いサポートしています。また必要時、訪問看護師や往診医の介入を依頼し、地域での暮らしに繋げています。

 今年度よりストーマパウチ交換や腹膜透析の手技・注意点などの見える化を目指し、患者や家族、訪問看護師に向けた動画(DVD)の提供を始めていています。

 

 

7C病棟 :病床数 45床(耳鼻咽喉科16床 眼科14床 脳神経内科9床 皮膚科6床)

 

 7C病棟では「それぞれの病期、病状、くらしにあった安全で安心につながる看護実践ができる」「互いを認め、互いを大切にできる職場環境をつくる」を部署目標に、多様化・高齢化する患者の声に耳を傾け、いつでも・どこでも・だれでも、というユニバーサルデザインの考え方を大切にしながら看護に取り組んできました。

 超高齢化が進み複数の既往歴があることに加え現疾患の特徴上、運動・感覚障害、自律神経障害、視力障害、認知機能障害があったり、治療に伴う心身・生活状況の変化を余儀なくされる患者が多くなっています。このような多様な患者の夜間せん妄・ADL低下・転倒転落予防などを目的として令和5年9月から病棟内デイ“陽だまり”を実施し今年度も継続しています。(参加数は昨年度のべ42名、今年度1月末時点でのべ35名)。また、多職種・患者参加型のベッドサイドカンファレンスを実施、安全で療養しやすい環境調整と身体拘束をしないケア実践を検討しています。

 今年度は、頭頸部癌の看護ケアの標準化を目的として「入院前~入院~退院後を通し、患者にあった必要な看護実践の提供や生活指導ができる」「新規採用者やローテーターであっても必要なケアが患者に提供できる」「患者に関わる他職種・多職種の介入内容がわかる」ように、外来と病棟が一元化されている耳鼻咽喉科の「頭頸部がん患者マップ」を院内関連部署の協力を得ながら作成しました。(表1参照)日々の実践に「頭頸部がん患者マップ」を活用し、患者がより安心して治療に向き合い療養生活が過ごせるように努めています。

<表1:患者マップ一部抜粋 入院中の病棟看護師実施内容>

7D病棟 :病床数 45床 (呼吸器内科34床 呼吸器外科11床)

 7D病棟は呼吸器センターとして、肺がんに対する手術療法、化学療法、放射線治療をはじめ、肺炎や気胸、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など呼吸器全般の疾患に対する治療を受けられる患者さんが入院してこられます。呼吸器外科手術ではほとんどの手術が胸腔鏡下で行われ、ロボット支援手術も多く行われています。術後は術後疼痛管理チーム(APSラウンド)の協力を得て疼痛管理に努め、早期離床・早期回復に繋げています。化学療法は入院化学療法の患者さんを対象としています。最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療も増えてきており、病棟薬剤師やがん放射線療法看護認定看護師を中心として学習会やカンファレンスを実施し、患者さんの生活を見据えた退院支援やセルフケア支援、心理的援助に努めています。放射線治療についても累積線量により定期的に多職種でカンファレンスを実施し、患者さんが治療継続できるよう支援しています。呼吸器センターとして質の高い看護が提供できるよう専門性を高め、治療選択においては患者さんの意思を尊重し、患者さんが治療参加を実感できる支援を心掛けています。

 また2022年より病棟外来一元化となり、病棟看護師が外来を担当する強みを活かして病棟外来連携にも力を入れています。2023年後期からは外来を担当していない看護師でも病棟から継続して外来に支援を繋ぐことができるよう対象患者を12項目に分類して可視化し、手術前後のIC同席や気管支鏡検査後のICに同席し患者の治療選択の意思決定を支援、化学療法や放射線治療後の健康観察、放射線治療後のスキンケアや誤嚥性肺炎の口腔ケアなどのケアの継続確認、認知・ADL等退院後の生活に不安を感じる患者さんの生活状況の確認等も行っています。病棟、外来ともに「面識のあるスタッフがいて安心する」と患者さんからの声も聞かれ、入院前から入院中、退院後と継続した支援を行うことができ看護師のやりがいにも繋がっています。

 

手術センター

 患者が安心して手術を受け、安全・安楽に手術を終えられるように、患者の手術が決定してから手術を終えて退院まで継続した周術期看護を目指しています。

 手術室では診療科医師・麻酔科医師・臨床工学技士・放射線技師・薬剤師・看護師・医療事務・SPCなど多職種で連携しチームワークをもって、バイオクリーンルーム2室、陰陽圧切り替え可能ルーム1室を含む10部屋で手術を実施しています。

 2024年2月からはダヴィンチXiに加えて、SPが導入され、地域がん診療連携拠点病院としてロボット支援手術を中心としたがんの手術や難易度の高い手術といった高度急性期医療を提供しつつ、地域における救急医療を担う病院として枠外手術や緊急手術を積極的に受け入れています。2024年度、ダヴィンチを用いた手術件数は、府内トップクラス件数を達成しました。手術室看護師も医療チームの一員として専門的な知識と技術を持ち、質の高い手術看護の提供を目指し人材育成に取り組んでいます。

 対象患者は、小児から高齢者まで全ての年代であり、小児に対しては、小児外科医師・病棟看護師・保育士と協働しプレパレーションを実施しています。希望があれば、手術日より前に「手術室に探検へ行こう!」と患児とその親ともに手術室内の見学を行っています。また、手術室の見学ができないときは写真を用いてイメージができるように説明をしています。事前に説明を受けることで患児の不安や恐怖心を少しでも軽減し、心の準備ができるようにサポートしています。

 術前外来では、麻酔科医師の説明の理解度や不安の有無の確認と補足説明などを行い、患者が麻酔について理解した上で手術に臨めること、術中・術後の合併症のリスクを軽減できるように禁煙や皮膚の保湿などの指導を行うことを目的に実施しています。さらに、可能な限り手術を担当する看護師が術前訪問を実施し、患者に対して個別性のある看護ができるように目指しています。

 周術期看護では、外来および病棟との連携が非常に重要です。患者が手術に向けた準備が整うように、外来看護師と病棟看護師が連携して情報共有を行うと共に、術中の患者の状態や手術について情報提供し、患者の回復をサポートしています。また、術後の早期離床や回復促進を目指し、麻酔科医師・薬剤師・栄養士・病棟看護師・手術室看護師で、術後疼痛管理チームとして、患者を訪問し、術後の疼痛管理を実施しています(APSラウンド)。

救急室・放射線科

 京都府二次救急医療機関・地域医療支援病院・災害拠点病院の救急部門として、年間6,000台以上の救急車搬送を受け入れ、13,000人の救急初期診療を行っています。院内の多職種スタッフだけでなく、救急救命士とも連携し救急医療を提供しています。また、ヘリコプター搬送の受け入れにより、救急室からアンギオやICU(集中治療室)へ重症患者の初期治療に対応しています。近年、人口構造の変化、医療の高度化で疾病構造も大きく変化し、救急受診をする患者は75歳以上の高齢患者の占める割合が大きくなると共に複合疾患をもち複雑な病態で救急受診する患者が多い傾向にあります。さらに、高齢単身者は社会的支援が十分でない状況で来院することが多いため、診断と初期治療の段階から患者とその家族の生活を見据えた支援を目指し取組んでいます。そこで、継続的な支援が必要な患者に『帰宅支援フローチャート』を活用しています。これを用いて、救急受診に至る経緯や家族の思いを地域包括支援センターや担当ケアマネージャー、あるいは訪問看護ステーション等に繋ぎ、社会資源の活用と介護サービスの見直し、さらにACP(アドバンス・ケア・プランニング)の推進など地域での患者のくらしを支えています。また、救急室では、脳血管や心血管などのIVR治療や内視鏡治療等の治療部門を担い、夜間等緊急にも対応できるよう関係部門と協働し、学習会や指導教育体制を整備し、安心と安全な医療を提供しています。

外来

 外来診療部門は37診療科(病棟一元化含む)、処置室、放射線治療室、採血室、健診センターで構成されています。外来看護師は、患者や家族が疾患と向き合う中での治療や社会生活の不安に寄り添い、患者が自分らしい人生を歩んでいけるよう、療養環境を整える看護を行なっています。

 2024年度は、部署目標「患者とともにケアを創造しパートナーシップを築く」を軸に、外来看護の見える化・質向上に取り組んでいます。パートナー看護師間で外来看護計画を立案し、10症例の看護展開を行なっています。放射線療法中の患者の皮膚炎に関するケアを看護計画に反映したことで、診療科を超えた看護の継続支援につながりました。チーム活動では、入院管理を必要とした糖尿病足病変患者に対し、多職種フットケアカンファレンスの企画運営、退院後も長期にわたるセルフケア支援が継続できる仕組みを作り、7人の患者に看護実践しています。また、診断期から病状説明に同席し医療者と患者家族の架け橋になり特に対話を促進する看護に力を入れています。がん患者にACP(アドバンスケアプランニング)を進めるために、消化器内科と放射線治療科では、外来診察の場での患者との対話を深めるツールとしてePRO導入を試行しています。

 外来看護師には、外来診察という時間制約のあるなかで、患者や家族に看護を提供するために、高いコミュニケーション能力と多職種他機関と調整する能力が必要です。ひとりひとりの看護師キャリアと学びたい意欲を尊重しながら、院内外研修を受講できるように配慮し、部署内学習会でアウトプットする場を設けることで人材育成を行なっています。また、新しい治療法や新薬に関しても、常に知識技術のアップデートできるように、勉強会を開催し看護実践能力向上に努めています。

 

※ 過去の部署紹介はこちらからご覧ください。